ベトナムで長く仕事をしていると、採用で痛い目を見る瞬間がやってきます。
私もその一人でした。
「華やかな経歴」「日本語が堪能」「自信に満ちた受け答え」──紙の上では申し分なかった。
でも、そこには大事なものが抜けていた。
定量評価だけでは見えない部分がある。
ベトナム人を評価するとき、多くの日本人が陥りがちな落とし穴があります。
語学力・資格・前職のポジション……そういった定量的な指標だけで判断してしまうこと。
でも人間には、数値に現れない部分がある。
たとえば、生活習慣の話。「仕事とプライベートは別」と言いたい気持ちはわかります。
でも、果たしてそう言い切れるかどうかは、正直なところ微妙です。
酒癖が悪い人が、職場にいい影響をもたらすケースを私はあまり見たことがありません。
ギャンブル癖にしても、「私生活だから関係ない」と割り切れるかというと、それもまた難しい。
センシティブな話なので、表立って指摘するのは難しい。
でも、リスクとして頭に入れておくことは必要だと私は思っています。
華やかな経歴の裏側に何があったか
ある会社での話です。
親会社が指名したベトナム人が採用されることになりました。
日本語堪能、華やかな職歴、自分の実績を語ることも上手。
鳴り物入りで入ってきた人でした。
ただ、周囲の空気は最初からどこかぎこちなかった。
後から聞くと、前の職場でお金にまつわる黒い噂があったそうです。
実際に見えてきた実態は、こういうものでした。
・スタッフからの信頼がほぼゼロ
・ちょっとしたことで怒り出す、傲慢な態度
・何でも自分を通さないと気が済まない仕切り癖
・お金に関するダーティな噂が絶えない
そして最終的には、会社のお金をちょこちょこ抜いていたことが明らかになりました。
大きな成果は残らないまま、退場することになりました。
防げた事態でした。性格の部分まで深く見ていれば、の話ですが。
口が達者な人は、成果をでっち上げられる
履歴書でわかるのは、どの会社にいたか、というそれだけです。
その会社での評判は、書いてありません。
面接も同じ。口が達者な人なら、自分の成果などいくらでも誇張できます。
特に外国人が相手のとき、自分を大きく見せようとする傾向はさらに強くなりがちです。
ベトナムの実情をよく知らない日本の本社が採用権を持っている場合、こういった人物のバックグラウンドを見抜くのは相当難しい。
「ベトナムで○○をやってきた」という言葉を、そのまま信じてしまうことになるんです。
目に見えない財産のつくり方
ベトナムでは特に、キックバックや賄賂の文化に深くはまった人を採用してしまうと、会社を揺るがすような事態につながりかねません。
一方で、性格のいい人を選んでおけば、少なくとも「一発レッドカード」のリスクはほぼなくなる。
表面的な成果が多少物足りなくても、人柄のいい人は職場の雰囲気を壊しません。
周囲の機嫌を損ねることがない、ということは、スタッフが辞めにくい環境につながっていく。
数字には出ないけれど、積み重なっていくプラスがある。
採用を「スペック勝負」で考えてしまうと、こういう目に見えない財産を見落とすことになるんだと思います。
それでも、採用には失敗します。
私自身、今もすべてうまくいっているとは言えません。
それでも、性格を重視するようになってから、少なくとも「大きく揺れる」ことはなくなりました。
会社をひっくり返すような事態を避けたいなら、まず人を見ること。
ベトナムでうまくやっていくための、これが私なりの答えです。








