警察官採用試験に合格した大学卒の人は半年間
それ以外の場合は10か月間警察学校に入校することになるんですが
これまでのボクの人生で一番過酷で厳しかったのは警察学校での半年間です。
ここでの生活は自分の人生史上最も過酷な時間でした。
単に体力的にきつかったとかそういうことではなく
理不尽の連続でメンタル的にもかなり追い込まれました。
これらの訓練がこれから警察官として働く者にとって良いのか悪いのかはわかりません。
きっと良い部分も悪い部分もあると思います。
厳しい訓練は警察官として不撓不屈の精神力を養うためとも言えますが
それが度を過ぎて、あまりの非常識ぶりに優秀な人材が辞めていくこともあります。
各都道府県のスケジュールはかなり爽やかに書かれていますが
ボクの実際の警察学校生活とは大きく乖離していました。
ここでは、できるだけ実際のエピソードを交えて警察学校の一日の流れを紹介していきます。
これから紹介する一日のスケジュールは
実体験と警察学校のHPを参考にして作成したものです。
だいたいの流れは同じだと思いますが
詳細部分は各都道県ごとに違いますのでご了承ください。
ということで、警察学校の一日を見ていきましょう!
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起床ー日朝点呼
朝は6時30分のチャイムで起床し、クラスごとにグランドに整列します。
6時半に音楽が流れ起床、6時32分には寮の前で整列し
列を揃えたまま走ってグランドに集合します。
起きてからすぐ動かなければなりませんが、ポイントは布団を丁寧に畳むことです。
寮生が全員外に出ているこの時間に
抜き打ちで教官のチェックが入り、角がそろってない畳み方をしたりすると
腕立て100回等の厳しい罰ゲームが待ってることもあります。
布団を畳むと同時に
ジャージに着替え、帽子をかぶり、部屋を整然と整え
完璧にロッカーや部屋の施錠をします。
これを秒速で行います。
グラウンドでは国旗掲揚、日朝点呼、警察体操を行います。
少しでも寝坊してグラウンドへの集合が遅れれば
教官にバチクソにしめられます。
誰のせいであったとしても規則は絶対なので連帯責任です。
国旗掲揚では君が代が流れるんですが
これを聞くと「地獄の1日を生き延びるぞ」
と気合が入ります。
体操はラジオ体操ではなく警察体操という警察官オリジナルの体操です。
これは警察官になってすぐ全警察官が覚える必要があります。
グラウンドでいきなり体を動かすので眠気はすぐ吹き飛びますが
冬場は寒すぎて地獄です。
国旗掲揚から点呼、警察体操まで
気合の入りまくった警察学校生がよどみなく
甲子園の甲子園球児並みにキビキビ動くので
その動きは感動的です。
その後7時ころから朝食になります。
入寮している警察学校生がなだれ込むため激込みで
まったくゆっくりできません。
10分以内で食事を済ませる必要があります。
ボクはごはんを食べるのが遅いので、毎朝トレーニングするかのように気合を入れて
ご飯を食べていました。
時間がない中で食べるのが遅いと
部屋員を待たせることになってしまうので
そこはかなり気を使わなくてはいけません。
都道府県によってはごはんを残してはいけないという縛りもあるみたいです。
警察学校では
「ご飯を早く食べることができる」
というのも立派なスキルです。
朝食が終われば1限目の授業に合わせて着替えをします。
1限目が武道なら柔剣道着に
1限目が座学なら制服に着替えます。
当然1限目の授業開始は時間厳守です。
朝ごはんを食べるのが遅れるとこの着替えの時間を圧迫することになります。
警察学校の構内は広く集合場所までの移動にも時間がかかるので
かなりバタバタする時間です。
朝ごはんを食べたあとゆっくりする時間は基本的には全くないと考えてください。
警察学校授業開始
授業科目は、主に法学・実務・術科の3つに分かれています。
法学は憲法、民法、刑法、刑事訴訟法、警察法、警察官職務執行法等幅広く勉強します。
実務系の授業は生活安全、地域、犯罪捜査、鑑識、交通、警備等があります。
術科は柔剣道、逮捕術、けん銃、救急法、教練、体育等があります。
かなり盛沢山な内容となっています。
試験はほぼすべての科目に対して行われ
順位が出るので基本的に気が休まる授業はありません。
唯一気持ちが休まるとすれば
宝くじの高額当選確率以下の確率で存在すると言われる
安西先生系の癒し系教官の座学だけです。
それでも試験があるのでボケっとしているわけにはいきませんが
シバかれる心配がないだけでも幸せなのです。
日々の訓練で疲労のピークを迎え寝落ちしてしまう人もいますが
それをやるとどうなってしまうかは後述します。
ちなみにボクは法律関係の座学とけん銃、鑑識が好きでした。
逮捕の要件や判例を頭にたたきこまないと現場で擬律判断ができないことを知ったり
テレビで見ていた指紋や足跡を採取する作業を自分でするのは胸アツです。
けん銃はなぜか的にバンバン当たるようになっていって、無双できた唯一の授業でした。
的に当てるのが上手な人ならけん銃の授業は楽しいですが
なぜか全く的に当たらない人もいて
隣の射場の的に命中させるくらいあり得ない場所に撃ったりしている人もいました(笑)。
そういう人にとってはけん銃の授業は鬱な授業です。
基本的に術科の剣道と柔道は選択制で入校前にどちらかを選ぶことになります。
剣道の防具一式は高いが柔道は道着1枚で済むから安くていい
という理由で柔道を選ぶと後悔することになります。
柔道は剣道の10倍体力的にきついです。
個人的には
体力に自信がない人
体格がよくないちびっ子は
剣道を選択するべきだと思います。
詳しくはこちら記事をごらんください。
ところで、警察学校の授業で一番きつい訓練はなんだと思いますか?
色々な意見があるかと思いますが、私的一番きつい訓練
それは・・・教練です。
教練とは
警察官としての定められた動きに慣れたり、盛んな士気と厳正な規律を養うために行う訓練です。
敬礼などの警察礼式からはじまり、警察手帳の出し方、警棒の伸ばし方など
細かく定められた動きを習います。
とにかく細かく厳しいです。
警察官としての作法も叩き込まれ
制服のシワ、靴が磨いてあるか、ポケットに警察手帳、警笛が入っているか等
いちゃもんレベルで細かくチェックされ、できてなければ厳しいペナルティを受けます。
クソ重たい盾(重さ5・5キロ)を片手で持って走る訓練では、
限界がきて倒れこむほど走りこみます。
靴もランニングシューズではなく固くて重い靴を履いて走るので本当にきついです。
ペースが遅れて列から脱落したりした者はもれなく教官から蹴られたりします。
ちなみに、警察学校ではクラスのことを「教場」と呼びます。
教場は、教官(警部補)と助教(巡査部長)がペアになって担当します。
この教官と助教が誰になるかで警察学校の辛さは大きく変わります。
個人的意見として、教官の役をキャラとして全うしている人はまともですが
根っからのパワハラ気質、弱いものいじめが好きな教官に当たると本当に地獄です。
意味のわからない長時間の叱責や、外出禁止等のペナルティ
当時は体罰も当たり前にありました。
外出禁止等のペナルティについては少し熱弁させてください。
一定期間の訓練を終えたあとは
週末に外泊を許可されます。
平日がどれだけ地獄だったとしても
この週末外泊があるから
厳しい学校生活を乗り切れると言っても過言ではありません。
いわば外泊は全警察学校生の希望の光なんです。
それを取り上げられるというのは
腹痛でトイレに駆け込んで用を済ませた後
トイレットペーパーを取り上げられるのと同意です。
それくらい残酷でショックな出来事なんです。
この外泊禁止で彼女と会えなくなるのが嫌だという理由で
辞めてしまった同期もいました。
話をもとに戻しますが、言いたかったことは
教官と助教は、授業だけでなく、訓練も一緒に行ったりしますので
常に接点がある非常に重要な存在だということです。
ボクの教場の助教はめちゃくちゃ厳しくて
誰もが震え上がる存在だったのですが
卒業式の日に助教の目が真っ赤になっているのを見て、ボクの涙腺は崩壊しました。
後述しますが、警察学校の卒業式はリアルに感動します。
警察学校の昼食
昼食も朝食と同じくまったくゆっくりできません。
入寮している全警察学校生がなだれ込んできます。
時間的にもごはんを味わって食べることは不可能なので
サクッと食べて食堂を出なければなりません。
教場当番の人はお昼に教官に提出物を提出しに行ったりするんですが
教官室に入るのはかなり怖いです。
申告要領を間違えたり、敬礼が活発でなかったり、提出物の順番が間違ってたり
少しでも時間に遅れたりすると怒鳴り散らされるからです。
提出物を受け取ってもらえず、窓から投げ捨てられたこともありました。
なので、学生は教官室の前で申告の言葉を何回か
「初任科第○○期〇〇番○○巡査は○○の提出に参りました!入ります!」
と申告の練習を頭の中でしてからノックをします。
教官室への入室は最後まで慣れることありませんでした。
では教場当番ではない人がゆっくりまったりできるかというと
全くそんなことはありません。
午後の授業の準備や、午後の授業が術科系だった場合は着替えをしなければなりません。
授業で忘れ物があった場合はペナルティがありますし、教官が連帯責任と言えば
クラスメートにも迷惑がかかります。
ということで話をまとめますと
警察学校のお昼休みはお昼休みという名の訓練だということです。
決して休憩するための時間ではありません。
警察学校の午後の授業
お腹が減ったからと言ってお昼に大量のごはんを食べると
連日の疲れもあって午後の授業は必ず睡魔に襲われます。
特に午前中に術科訓練があったときなどはなおさらです。
しかし、目を閉じて寝てしまったが最後
とてもつらいペナルティが待っています。
筋トレ系の罰を与えるのが好きな教官
ただでさえない時間を奪う反省文を書かせるのが好きな教官
ひたすら怒鳴り散らす教官
と様々ですが、どれも地獄です。
ですので、どれだけお腹が減っていても
全力でお昼ご飯を食べることはおすすめしません。
午後の授業が激しい運動であれば
急いで食べた食べ物が逆流してきますし
座学であればもれなく眠くなります。
眠くなりやすい人はお昼は少しでも時間があればコーヒーを流し込んだり
カフェインの錠剤を飲んだりなどの対策が必要です。
警察学校の課外活動
午前、午後の授業を切り抜けてもまだ終わりません。
とくに警察学校に入校したてのころは辛い課外活動が待っています。
いつも必ず限界突破を要求される筋力トレーニングや
ひたすら時間まで走り続けるランニングなど様々です。
色々話を聞くと課外授業の厳しさは
都道府県だったり
担当教官だったり
時期によって変わるようです。
ボクは体力が三井寿バリになかったこともあり
課外訓練はいつもギリギリの状態まで追い詰められていました。
もし、この課外の時間を自由に使えたら
どれだけ幸せな警察学校ライフがおくれたのでしょうか。
課外活動が延長してしまうと
そのあとの夕食やお風呂の時間を圧迫し
夜も全くゆっくりできないパターンに陥ります。
まさに負のスパイラル。悪循環です。
警察学校の夕食
課外活動がない日であれば夕食は比較的ゆっくり食べることができますが
時間がないときはお風呂に入る時間も計算にいれて動かなければなりません。
時間切れでお風呂に入れなくなったこともありますが
そうすると匂いがかなりやばいことになります。
普段なら1日の最大の楽しみであるお風呂も
あまりいい思い出はありません。
一日の訓練を終えて香ばしい匂いのする男たちが大挙する
お風呂に希望があるわけがありません。
時間制限もあるのでゆっくり入るということもできません。
そんな感じで通常の日であっても
時間を気にせずゆっくりということにはほぼなりません。
誰かに記憶を抹消されたわけでなければ
「今日はすることないからゆっくりしよう」
と思った記憶は1日もありません。
お風呂後は就寝前点呼の時間まで
洗濯やアイロンを行ったり、日誌を書いたり勉強したりします。
ここまでくると目を閉じたらすぐ落ちてしまうくらい
体力の限界がきていますが、
「今日はつかれたから早く寝ようかな」
ということはできず
この後の就寝前点呼が終わるまでは寝ることはできません。
警察学校の就寝前点呼
就寝前点呼は少数の当直教官が担当するので比較的事件は起きません。
教場当番は当直教官の前で人数を申告しなくてはいけないので
緊張しますが、やるべきことをやっていればシバかれないので少しだけ安心です。
「初任科第○○期!!総員○○名!現在員○○!!事故○○名!!異常ありません!!(敬礼!)」
記憶が正しければこんな感じの申告を気合120%ですれば良かったはずです。
消灯
就寝前点呼が終わつてから消灯までの1時間くらい時間がありますが
ここでもゆっくりできた記憶はほぼありません。
翌日の準備や、課題の作成、洗濯、アイロンやることがたくさんあります。
11時の消灯までに終わらなければ、明かりが漏れないように布団をかぶって
布団の中で懐中電灯をつけて作業することになります。
布団から光が漏れれば、当直教官に見つかってしまうので
ビビりながら作業することになります。
当然、見つかればとんでもないことになります。
この時間は目を閉じれば即気絶するほど疲れています。
そしてこの目を閉じる瞬間こそが至高の瞬間です。
しかし、その至高の瞬間も一瞬で
翌日起きるとミリ単位で動かすだけで体が痛いほどの
筋肉痛で目が覚めることになります。
おわりに
ボクにとって警察学校は生涯これ以上ないと言い切れるほど過酷な生活でした。
訓練が厳しいのは仕方がないとしても
とにかく時間がなかったり
理不尽な仕打ちを何度も受けたり
するのは本当につらいものでした。
私の県の警察学校では「指導巡査」なる制度があり
先輩が後輩の指導をします。
19歳の警察学校生であってもボクより先に入校していれば
りっぱな先輩です。
教官に洗脳された先輩はとにかく厳しく、当時26歳のボクは19歳の先輩に
畳んだ布団の折り目が3ミリずれてるから腕立て30回
などと言われ、腕立てをさせられましたが
その日はこれまでの訓練でパワーが残っていなかったため
数回こなしたあと、曲げた腕をまっすぐにできなくなりました。
ギブアップはしたくないので腕を曲げた状態をキープするのですが
とはいえもう腕をあげることもできず
狂牛病の牛状態でガクガクしながら頑張っていたら
19歳の先輩に死ぬほど笑われたりしました。
まあ、今となっては良い思い出です。
ここまで読んでくれた方は、
「なんだ、警察学校はただの地獄か」
と思うかもしれません。
しかし、それはすこし違います。
卒業の日には圧倒的な感動が待っています。
辛い訓練を一緒にくぐり抜けた仲間とは最高の絆が生まれています。
卒業の日、ボクは不覚にも顔をくしゃくしゃにして号泣してしまい
「えっ??あのほっくが泣いてる??」
とびっくりされました。
ボクは海外移住してから全然同期と会えていませんが
今でも同期が大好きです。
同期だけでなく一緒に現場にいった同僚のことは
今でも応援しています。
警察官はときに悲惨な現場や、過酷な現場に行くことがあるのでそこで
一緒に苦楽を共にした仲間は一生ものだと思っています。
今回の記事では警察学校の辛さを書きましたが、警察学校の生活は
一生懸命やった人ほど最後は感動できるかけがえのない時間だと思います。
もう一度やれと言われたら全力で拒否しますが(笑)
現場にいるすべての警察官がこの警察学校の厳しさに耐えてきた同士だと思うと
警察官を辞めた今でも警察官には尊敬しかありません。
※一部の犯罪警察官、パワハラ、セクハラ警察官を除く
P.S 警察学校を卒業した後のボクの初めての配置先は
「絶対に行ってはいけない」と言われている県内屈指の激務の場所でした。
人生はうまくいかないですね。